相続人全員が集まることが容易で、話し合いもスムーズにできて・・というのが理想ですが、高齢化社会になり、亡くなられた方の年齢が上がっていると、何年もあったことがなく連絡先のわからない親戚が相続人になっていたり、それぞれの思いが交錯して、話し合いがスムーズに進まなかったりすることもあります。

そうなってくると、法的な手順をふまないと遺産分割が終わりません。2020年7月より、法律が改正されて、新しい相続のルールができました。

複雑な法律を丁寧にご説明しながら、遺産分割協議の成立に向けてお手伝いします。

■相続の意義

相続とは、亡くなった人(「被相続人」とといます。)の財産や権利義務を、被相続人と一定の身分関係にある相続人に承継させることをいいます。

私有財産制度のもと、被相続人は、遺言書を書いて、自分の財産を自由に相続(贈与)することができますが、そのような遺言がない場合や、遺言の内容が公平を欠く場合などにしなえて、民法では、様々な事柄が法定されています。

■相続人

現在の民法では、亡くなった人の配偶者は常に相続人となります(民法890条)。

配偶者以外の人は、①被相続人の子(子が亡くなっている場合は孫)、②被相続人の父母などの直系尊属)、③被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がなくなっている場合はその子(被相続人の甥姪))が、①の類型の人が居なければ②の類型の人、①②の類型の人が居なければ③の類型の人が、配偶者と一緒に相続人となります。被相続人の子は、被相続人の死亡時に胎児であっても、相続人となります(民法886条)。

内縁関係や、同姓婚など、民法に定められた婚姻関係にない方は、相続人になることはできません。

■相続の放棄と承認

相続人が、相続を拒否することを「相続放棄」といいます(民法915条)。相続放棄をする場合には、相続の開始があったことを知った日から、原則として3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の手続をしなければなりません。

なお、相続放棄をしたいと思っていても、相続財産の一部または全部を処分すると、「単純承認」といって、相続を承認したことになり(民法921条)、後から相続放棄をすることはできなくなります。

■相続分

現在の民法では、各相続人の相続分について、次のように定めています(民法900条)。遺言書で相続分が指定されていない場合や、相続人間で相続分の割合について別段の合意をしない場合は、以下の割合で相続することになります。

・配偶者と子が相続人の場合

配偶者1/2、子1/2(子が複数の場合は1/2を子の全員で等分)

・配偶者と直系尊属(父母など)が相続人である場合

配偶者2/3 直系尊属1/3(直系尊属が複数の場合は1/3を直系尊属の全員で等分)

・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(兄弟姉妹が複数の場合は1/4を兄弟姉妹の全員で等分)

■特別受益

特別受益とは、相続人の中に、生前の被相続人から特別に贈与を受けたような人がいる場合の、特別な利益のことです。公平の観点から、特別な利益を受けた人の相続分が減額されます(相続分の持戻し。民法903条)。特別な利益の具体例としては、被相続人から結婚資金や自宅購入資金を受けたような場合があげられます。

なお、このような特別受益があっても、被相続人が、相続分の減額をする必要はないという考えを示していた場合は(「持戻しの免除」といいます)、特別受益を受けた人の相続分は減額されません(民法903条3項)。

■寄与分

寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に特別な協力をした人がいる場合の、その協力によって維持・増加した財産のことをいいます。公平の観点から、このような特別の協力をした相続人の相続分が増額されます(民法904条の2)。

具体例としては、無報酬での家業や看護・介護、生活費や施設費用の支援などがあげられますが、親族の通常の協力の範囲を越えた協力であることが必要となります。

■特別寄与料

相続人ではない人の貢献を考慮するための方法として、令和元年7月1日以後に相続が開始した場合に適用される、新制度です。相続人ではない人で、被相続人の介護や看護などの貢献をした場合に、その貢献に応じた金額を特別寄与料として請求できるようになりました(民法1050条)。請求には期限があり、「相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月」を過ぎたときや、「相続開始の時から1年」を過ぎたときは請求ができなくなりますので注意が必要です(民法1050条2項)

■遺留分

遺留分とは、一定の範囲の相続人を保護するために、民法が最低限の確保を認めた権利をいいます。「一定の範囲の相続人」とは、兄弟姉妹以外の相続人とされていて、具体的には、配偶者や子(子がいない場合は被相続人の直系尊属)です。配偶者や子は、自身の相続分の1/2、直系尊属は自身の相続分の1/3にあたる割合の遺留分が認められています(民法1042条)

遺留分が侵害されている相続人は、侵害をした人に対して、侵害額に相当する金銭の請求をすることができます(遺留分侵害額請求権。民法1048条)。この請求は、遺留分を侵害されていることを知ってから、1年以内にする必要があります(民法1048条)。

■配偶者短期居住権

令和2年4月1日以後に相続が開始した場合、被相続人の所有建物に無償で住んでいた配偶者は、少なくとも6ヶ月間は、そのまま無償で住み続けることができるようになりました(民法1037条)。遺言書でその建物が配偶者以外の人に贈与されていたり、相続人の一部に、配偶者がその建物に住むことを反対している人がいたりしても、この居住権は認められます。

■配偶者居住権

被相続人の配偶者が、被相続人の所有建物に住んでいた場合、遺産分割としてその不動産を取得するとそれだけで相続分に相当する遺産を取得したことになってしまい、預貯金を取得できないことや、他の相続人に清算金を支払わなければならなくなることがありました。そこで、令和2年4月1日以後に相続が開始した場合、一定の要件のもとで、その建物を「無償で使用収益できる」新しい権利(配偶者居住権)が創られました(民法1028条)。所有権とは異なる権利で、処分権限はありません。遺産分割や遺贈によって、配偶者はこの「配偶者居住権」を取得することができます。

■遺産分割前の預貯金の払戻し制度

平成28年12月19日、最高裁判所が預貯金も遺産分割の対象となると判断したことにより、原則として遺産分割協議が成立するまで、相続人各自で遺産の預貯金を下ろすことができなくなりました。ただ、そうすると、もともと被相続人の扶養で生活していた相続人は、当面の生活費に困ってしまうことも生じかねません。そこで、同一の金融機関に対しては150万円を上限として、相続開始時の預貯金額の3分の1に、相続人の法定相続分を乗じた金額を払い戻すことができる制度があります。払戻を受けた金額は、遺産の一部分割として取得したとみなされます(民法909条の2)。

■預貯金の仮分割制度

「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」(民法909条の2)の限度額を超える金額を下ろす必要が出てきた場合の手段として、「預貯金の仮分割制度」があります。遺産分割の審判又は調停の申立てている場合で、「相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情などから遺産の預貯金を下ろす必要があり、他の共同相続人の利益を害さないことを家庭裁判所に申立てる制度です(家事事件手続法200条3項)。

■遺産分割協議

遺言書がない場合や、遺言書によっても相続の方法が具体的に定まらない場合は(財産の記載漏れがある場合など)、相続人全員で協議をして、遺産の具体的な分け方を決める必要があります。

ご自身で話し合いをしても協議が整わない場合の手段として、家庭裁判所における遺産分割手続があります。まずは、遺産分割調停を行い、調停委員会(調停委員2名と裁判官)の関与のもとで、当事者間で話し合いをして合意を目指します。

遺産分割調停では合意ができない場合は、「調停手続」が「審判手続」に移行します。審判では、それまでに提出された資料をもとに、裁判官が判断をします。

■葬儀費用と相続

「葬儀費用は、被相続人のお金から支払う」と思っている方が多いと思います。相続人の全員でそのように合意していれば問題ありません。ですが、法律上は、葬儀費用は葬儀の主宰者(喪主)が支出するものとされます。ですから、葬儀費用を被相続人のお金から支払ってしまった場合は、後で、その使途の明細を他の相続人から問われることもあります。説明ができないと「使途不明金」として返還の請求をされてしまいかねませんので、ご葬儀関係の領収書や、領収書が発行されない件の使途はそのメモ書を残しておくのがよいです。

2 費用(遺産分割調停及び審判)

経済的利益の額着手金即時抗告時加算額
 3000万円以下の場合   33万円    11万円 
 3000万円を超え5000万円以下の場合   55万円    22万円
 5000万円を超え1億円以下の場合   77万円    33万円
 1億円を超える場合  110万円    44万円

遺産分割調停審判事件の報酬金は、取得できた遺産額の5.5%です。

(協議させていただいたうえで、遺産分割調停審判事件の着手金及び報酬金の額を、相続人の数や難易度に応じて、適正妥当な範囲内で増額することもあります。)